ハーブヨガが成立した時代の社会環境
自然環境は一気に変わりましたが、社会環境はどうでしょうか?
インターネット技術がもたらした情報の自由化によって、社会構造はある程度まで自由化が進んでいます。
もちろんインドや一部のイスラム圏とか、或いはアフリカの一部の国々のように、男尊女卑が未だに根強い地域もあります。
しかし、先進国と言われるところや東南アジアなどでは、人権上、明らかに問題のある差別的な階級制度は一応、払拭される方向に進んでいると思います。
一人一人が人間として平等であるという人権意識も高まっています。
しかし、同時に人類は自分たちを何回も破滅させることの出来るだけの武器と弾薬を手に入れました。
現在、知られている核兵器の量だけで何十億という人口が一気に死滅してしまうのです。
国際紛争を見ても分かるように、現在でも文明の衝突が世界中で起きています。
もしも、他者への憎悪と恐怖が暴力となり、それが世界中に広がった時には、人間社会は破滅の道へと進むことになります。
同時に、途上国で搾取的に人びとを働かせたり、途上国の自然を破壊したりしながらものを作っているという構造も世界にはあります。
労働による合法的な搾取というのは大人だけでなく、子供たちにも及んでいます。
例えば、バングラデシュなどでは子どもたちが教育を受けることはなく労働に駆り出されます。
そして、成長した彼らの子どもたちもまた同じように教育を受けることなく、労働の場に駆り出されます。
2016年にはトマ・ピケティの「21世紀の資本論」という本が話題をさらいました。
[amazonjs asin=”4622078767″ locale=”JP” title=”21世紀の資本”]この本では統計に基づいて、階層間の資本移動について解説しています。
ざっくばらんに言えば、世界の2割の人口が世界の8割の富を独占していて、しかもその格差が広がっていることを明らかにしています。
富める者はますます富み、貧すものはますます貧すという社会構造は確かに頑として存在します。(もちろん、貧困というものの、生活水準は上昇していきます)
確かに、社会構造は自由化の方向に進んでいます。
しかし、まだまだ破壊的な内部矛盾も抱えている。
これが、ハーブヨガの成立した社会背景なのです。
ハーブヨガが「今の時代」に対応しなければならない理由
ここから分かることは、ヨガを実践するにしても社会や自然に配慮しなければ、文字通り生き残れない段階に入っているということです。
情報化の進展によって、世界中の情報、それも大問題がひっきりなしに入ってきます。
つまり、社会構造や自然に配慮せずに行動しなければ、幸福でいることすらできないのが現代人なのです。
個人的な幸せと言われるもの、例えば、健康であるとか、美しくなるとか、自分に自信を持てるようになるとか、優良な人間関係を持つとか、社会的に成功するとか、愛のある家庭を持つとか、そういった部分を達成することにも、社会構造や環境汚染という要素が介入してくるわけです。
これについては、ヨガという立場から具体的に説明しましょう。
ヨガでは空気の中に入っているエネルギーをプラーナと呼びます。
このプラーナというのは、ヨガの成立した数千年前は大気汚染も何もありませんから、素晴らしく浄化されたものだったのかもしれません。
しかし、今はその空気の質が大きく変わっています。
工場や車の排気ガスは地球上に拡散しています。
汚染された空気は何らかの化学物質で濁り、ともすれば酸性雨などの原因になるのです。
当然、空気に含まれるプラーナという生命エネルギーの質や量にも影響はあるでしょう。
つまり、先人達が呼吸している空気は現代人が呼吸をしている空気とは別物になっているのです。
私達が呼吸法を徹底するにしても、空気の質自体に配慮しなければヨガを行うことができない時代になっているのです。
他の例で言えば、土壌とか水の汚染があります。
これらは人間が健康に生きていく上で必要不可欠なものです。
もしも、この土壌や水が汚染されているとしたら、いくら私達がヨガの坐法を頑張ったところで健康になることすら達成できないわけです。
また、空気や土壌や水源が汚染されているということを知るだけで、私達の無意識には大きな恐怖の砂嵐が起き、私達を幸福な状態から遠い場所へと連れ去ってしまいます。
その意味で、現代人のためのヨガであるハーブヨガでも社会や環境に対しても、何らかのアプローチしていく必要があると言えるのです。
ここが一般的なヨガとハーブヨガの大きな違いです。
一般的なヨガはどうしても個人としての幸福にフォーカスする傾向にあります。
しかし、ハーブヨガは現代社会の問題にアプローチするための方法論でもあるのです。
ハーブヨガはおおもとの自然を癒し、活性化させるためのヨガ
これに行き着いたきっかけの一つは子どもたちのアレルギーが非常に多いという問題です。
私達はこれまで沢山の方の体質改善を応援してきましたが、その方のお子さんたちにアレルギーを持っている人があまりにも多いことに愕然としたからです。
私達の世代の場合、食物アレルギーを持っている子どもたちはそれほど多くはないように思えました。
しかし、今の時代は小学校の一つのクラスに必ず一人は給食で食べられないものがある子どもたちもたくさんいらっしゃいます。
食物アレルギーの子供たちはアレルゲン物質を少しでも摂取するとショック反応で喉がぎゅっと締まって呼吸困難になることもあるそうです。
そのまま死に至る場合もあって、ニュース等でもよく放送されています。
このような状況について、ハーブヨガが言うように心・体・関係性の習慣を改善していったり、親のビジョンを改善していったりしたら、緩和していく可能性も大いにあると思います。
しかし、それにしても割合として多すぎると思いますし、心を正しても、体を正しても、言葉を正しても、私達の生活の根幹になっている自然環境がおかしくなっていたら、非常に効率が悪いと断じざるを得ません。
そう考えた時、ただただメソッドを実践するというのには限界があります。
呼吸法であれ、坐法であれ、食事法であれ、意思疎通の仕方であれ、自然環境と全てつながっています。
そのおおもとが大きな破壊や汚染を受けているのだとしたら、そもそものヨガのメカニズムの前提自体が崩れてしまいます。
こういう理由から、私たち一人一人の行動という部分まで意識し、自然までをケアする方法を伝えるのがハーブヨガの本質的な使命ということになります。
私たちが本当の意味で健康で幸福になるためには、私たちが自然を相手にハーブヨガを行い、ハーブになって手当てをするという感覚が大切です。
ハーブヨガを行なう時、あなたはハーブボールを持って自然に手当てされていると思っているかもしれません。
しかし、私たち自身の体がハーブになって地球の手当てをしてあげる気持ちを育てましょう。
地球の肝臓、地球の腎臓、地球の脾臓はどこにあるんだろう想像して、そこの部分に私が手当てをしてあげるんだと感じて下さい。
その姿勢こそがあなたが世界のハーブになっている状態であり、ハーブヨガの本当の実践者だと言えるのです。
これが『世界のハーブになる』という言葉に隠された意味なのです。
注記
勿論、こういったことをいきなり上から伝えても届くことはありません。
自分自身のライフスタイルの中で見直すべきポイントを見直し、一つ一つをゲームのようにクリアしていくことが大事です。
あくまで、「楽しい」「気持ちいい」「かわいい」といった子供的な感覚がなければ、もはや伝わらない時代だからです。
国際ハーブヨガ協会の公式アカウントです。宗冨美江(Fumie MUne)と宗健太郎(Kentaro Mune)による共同執筆の記事となります。
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