Tune-inとは子どもに戻ること

ハーブヨガのクラスでは毎回、クラスの一番最初にTune inと呼ばれる作業を行います。

これは、ハーブヨガを行うため心と体を解放して、自分自身について気付きを得る環境を整えるための方法です。

簡単に言えば、子供に戻る作業を行うのがこのTune-inなのです。

私たちは日常生活で様々なストレスにさらされています。

心の中では「あれをしなきゃ」「これをしなきゃ」と色んなことに焦っています。

こんな時に、いきなりヨガを行おうとしても、日常生活を引きずっている限り効果は見込めません。

そこで、Tune-inという子供に戻るメソッドを行うことで、日常生活の鎖を外し、武器を置き、鎧を脱ぎ捨てていきます。

いわば、ハーブヨガという茶室に入るための作法がTune-inであるともいえるのです。

 

Tune inがうまく出来るようになると、これまで無視していた心身の痛みに目を向け、それを癒し、自分を元気付けることができるようになります。

それは、心身の波を観察するのに適したマインドフルな状態(マインドフルネス)をつくることができるとも言い換えることができます。

伝統的なヨガでは真言であるマントラを念じることによってこの作業を行います。

マントラとは宇宙の真理とつながる方法とされるからです。

ハーブヨガではマントラのワークは言葉にエネルギーを与えるKotodama Workの範疇に入るため、クラスの最初ではマントラは行いません(※)。

 

Tune-inと姿勢美法はマントラに入る以前の準備のための基礎作りとして行うメソッドです。

そして、基礎だからこそ、とても大事なものになります。

Tune-inでは自然を観察することを通じて、自分の波を観察し、世界の波とつながっていきます。

自然を観察するといっても、いきなり海や川に出かけていくという大掛かりなものではありません。

教室に用意された花・植物の観察や、空の雲、そして月や星の観察といった自分の目で見えるものからスタートします。

特殊で非日常的な自然ではなく、普段から日常的に接しているものが持っている美を観察する事があなたの観察眼を鍛えるからです。

※マントラのワークは一般的なハーブヨガセラピークラスには含まれていません。

Tune-inの種類

Tune-inには様々な種類が存在します。

  • 香りのTune-in
  • 触覚のTune-in
  • 味覚のTune-in
  • 視覚のTune-in
  • 聴覚のTune-in

このように基本的には五感を駆使することによって行われる瞑想的な体験です。

以下では視覚のTune-in(描くTune-in)について解説しましょう。

絵を描くTune-inでの対話の仕方

Tune-inの際に、生徒は本日のお題として示された植物を無心で観察し、紙の中に書き出していきます。

例えば観葉植物であれば、その葉のつき方、根の張り方、色ツヤや軸というものをつぶさに観察し、表現していくという感覚です。

 

ハーブヨガクラスでのTune-inの題材になるものは、自然物であることが条件です。

例えば、貝殻、雲、水、植物、花、卵、ハーブ・野菜・フルーツなど。

この時にハーブヨガセラピストは花言葉やテーマが表す象徴的な意味などの知識などを持ち出すことはありません。

あくまで子どもに戻って、初めて見るものの目で観察し、表現することが大事だからです。

絵と言葉で気づきを積み重ねていく

そして、描いているうちに分かってきますが、観察して書き出していく際に色々な感情が渦巻くのを感じることになります。

まるで植物や自然が自分に語りかけているように様々な言葉が生まれ出てきます。

そこで、あなたはその言葉を書き出していってください。

『寂しい』『嬉しい』『いい天気』などどんなものでも構いません。

その言葉は対象物があなたに伝えてくれるメッセージなのですから、タブーは一切考えずに書き出していきます。

上図:健太郎が描いたTune-in

 

ここで大事なのは表現の完成に拘らないことです。

この表現の作業は何かを競う場ではないからなんですね。

ハーブヨガクラスではTune inの時間は5分から10分と決まっています。

しかし、テストではありませんから時間内に全てを完成させる必要性はありません。

自分の心に映った声にただただ正直になって、未完成でもいいので描いていくのです。

シェアをするから理解できる

そして、スケッチと言葉を5~10分ほどで書き出したら、次にそこで得られたものを皆とシェアするステップに移ります。

これは他者とのシェアを通じて、自分の内側にある感覚をより潜在意識に落とし込むために行います。

中国思想の根幹にある陰陽理論とは『足りないものは補われ、余っているは与える』ということでもあります。

視点を他者と共有することによって、まさにこれができるようになるのです。

上図:Tune-inを通じて感じたことについてシェアをしている様子

 

なぜ、シェアをするのかというと、あなたの内側にある視点を共有することで、さらに自分を知り、そして他者を知り、それが大きな気付きになるからです。

ここではあなたの好きなようにシェアをしてかまいません。

ただし、講師を含めて周りの人々に評価されたいと思っては練習にならないので注意しましょう。

Tune-inは「褒められる」ために行うものではありません。

子供は褒められたいがために絵を描くのではないからです。

目の前にある現象の面白さに夢中になって、もはや没我の境地に至っているからです。

私たちもそれにならい、評価され合い・褒められたいという心をできるだけ捨ててみましょう。

上手くシェアができないと思う時は?

ここでもし、あなたの内側に恥ずかしがったり、躊躇してしまうならば、それはあなたに素晴らしいワークを与えます。

なぜかというと、「子供なれない」と思うその背景には、「自分はこうでなくてはならない」ということへの強い執着や、或いは弱さへの恐怖があるからです。

それは、自分に対する過度の信頼や期待が隠されています。

場合によっては、「私には何の価値もない」という無価値観が隠されていることもあるでしょう。

これらの感覚があることは決して悪いことではありませんし、誰でもある一定以上は持っているものです。

しかし、その牢獄にあなたの内なる子供を置いてけぼりにしてはいけないのです。

牢屋の鍵を開けて、あなたのもとに手繰り寄せ、いっしょに遊んであげましょう。

このように他者とのコミュニケーションの中で、無自覚に形成していた『私』(我)という名の牢獄に向き合うことができるのもTune-inの特徴であるといえるのです。

 

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